あなたの「困った」を「相談してよかった」に変える行政書士・相続コンサルタントのなかしま美春です。
全33回のコラム、第7回をお届けします。
この連続コラムでは、「相続でトラブルになりやすいこと」、そして「今できること」について、わかりやすくお伝えしていきます。
このコラムが、相続について考える小さなきっかけとなり、
そして「家族で話す」「書き残す」という第一歩につながることを願って――
ぜひ最後までお付き合いください。
(全33回の一覧は>>こちら)
【連続❢相続コラム】第7回:再婚している(前妻や前夫との間に、子どもがいる)

写真はイメージです
「もう何年も会っていないが、前妻(前夫)との間に子どもがいる」
「前妻(前夫)との間の子どもにも愛情がありますが、子どもは私の存在すら知らないかもしれません」
「今ある財産は今の家族と築いたもの、だから今の家族に多くを残したい」
ご相談の中で、こうしたお声は珍しくありません。
離婚や再婚は、それぞれの事情に寄り添った大切な選択です。しかし、相続の場面では少し複雑な問題をはらんでいます。
今回は、「前の配偶者との間に子どもがいる」場合に起こりがちな相続トラブルと、その対策について解説します。
前妻(前夫)との子どもも、立派な相続人です
まず知っておいて欲しいことは「前妻(または前夫)との間に生まれた子どもも、法定相続人になる」ということです。
たとえばあなたが亡くなった場合、法定相続人は以下となります。
✅再婚相手(配偶者)
✅前妻(前夫)との子
✅再婚後に生まれた子どもたち
この全員が、遺産を分けるための話し合い「遺産分割協議」に参加する事になります。
もし、前妻(前夫)との子が未成年であれば、未成年の子には法律行為を行う権限がないため、通常は親権者である前妻(前夫)が、法定代理人として遺産分割協議に参加します。
つまり、あなたの遺した財産を分割して相続をするために、前妻(前夫)との間の子ども(場合によっては、前妻や前夫)と、再婚後の妻、その子ども達で遺産分割に向けた「話し合いの場」を持たなくてはいけないわけです。
ちょっとイメージしてみてください。この話し合い、うまく進むと思いますか?
・・・・・とっても難しそうですよね( ゚Д゚)
このようなケースでは、双方にとって戸惑いや不安が大きく、相続の話し合いがスムーズに進みにくくなる傾向があります。
交流のない相続人同士…仲良く話し合える?
特にトラブルになりやすいのが、再婚相手やその子どもと、前妻(前夫)との間の子どもとの関係性です。
長年まったく連絡を取っていない子どもがいたり、今の家族とその子どもが面識すらなかったりする場合、「お互いの存在もよく知らない者どうしで、遺産を分け合う」という状況が発生します。
双方の家族や一方の家族に、相手家族への感情的なしこりが残っていたり、「相手が財産を多く取ろうとしているのでは?」と疑心暗鬼になってしまったりすると、相続の話し合い自体が成立しないこともあるからです。
結果的に…
・相続手続きが止まってしまう
・お互いに感情的になり余計にこじれてしまう
・弁護士を立て争う事態になる
こうしたリスクを避けるためには、生前の対策がとても重要なのです。
トラブルを防ぐために、今できること
こうした問題を防ぐには、まず「現状の確認」と「遺言書の作成」が重要です。
❶ 推定相続人の確認(戸籍の収集)
出生から現在までの戸籍を集めることで、自分に万が一のことがあった時、相続人が誰になるのかを正確に把握することができます。
❷ 相続財産の洗い出し
預金や不動産、保険など、今ある財産を整理しましょう。
❸関係性に配慮した「遺言書の作成」
各相続人の状況、各相続人とのこれまでの関係性を考慮し、ご自身のお気持ちを反映した遺言書を残しておくことで、あなたの大切な方が相続手続きで困らないようにすることができます。
「誰に、なぜその財産を渡したいのか」を明確にして、
ご自身の想いを込めた遺言書を残しておくことが、何よりの対策になります。
もし、上記のような生前の対策を何もせず、話し合いで解決できなかった場合、最終的には家庭裁判所を通じて決着を図ることになります。
ただし、ここで注意しておきたいのが、この家庭裁判所の手続きには「時間」も「手間」も「お金」もかかるということ。
解決までに何年もかかるケースもあり、経済的にも精神的にも大きな負担になるため、相続人同士の仲がさらにこじれてしまったり、残された家族にとって、生涯忘れられない苦い思い出となってしまうケースも珍しくありません。
なぜ遺言書があるとスムーズになるの?
❶ 遺言書の内容に従って手続きが進められる
相続人全員の合意がなくても、遺言書があれば原則としてその内容に従って相続手続きを行うことができます。つまり、話し合いがまとまらなくても大丈夫なんです。
※ただし、相続人全員で合意をした場合や遺留分など例外もあるため、個別の事情は専門家に相談するのが安心です。
❷ 親の意思として受け止めやすい
「お父さん(お母さん)がこう書き残しているなら仕方ないね」と、相続人が納得しやすくなります。
❸ 感情的な対立の“火種”を減らせる
「どう分けるか」でもめるのではなく、「どう受け取るか」に意識が向くことで、争いを避けやすくなります。
❹特に「公正証書遺言」の作成がおススメ!
公証人が関与するため、法律上の不備や無効となるリスクがほとんどありません。
遺言書を作成されるなら、作成時に費用はかかりますが、後の手続きがスムーズに進む「公正証書遺言」を選ぶことがポイントです。
想いのこもった遺言が“争族”を防ぐ
付言事項とは、法的な効力はないものの、遺言者の「想い」や「背景」を自由に伝えられる文章(手紙)部分のことです。
たとえば…
「私には、前の結婚で授かった〇〇も、再婚後にともに過ごしてきた〇〇も、これまでの人生で、どちらの子にも支えられ、励まされてきました。2人に対して、感謝と愛情の気持ちは変わりません。」
「〇〇には障がいがあり心配しています。他のみんなにはすまないが、〇〇に多めに残すことを理解してほしい」
「私は良い親では無かったけれど、皆が穏やかに過ごしてくれることを心から願っています」
私自身、こうしたメッセージが、双方の相続人の気持ちをやわらげてくれるケースを見てきました。
「困らない相続」がいちばん!
いかがでしたか?
再婚していて、前妻(前夫)との間にお子さんがいるケースで、相続でトラブルが起こりやすい理由と、その対策方法がお分かりいただけたと思います。
「今のうちに準備をしておくこと」が、未来の家族を守るカギになります。
✨遺言書は、権利を感謝に変える魔法です✨
✨感謝で迎える「相続」は「争族」になりにくい✨
相続時のトラブルの心配がある場合や、対策として遺言書の作成を検討している方は、ぜひ早めに専門家にご相談ください。
なかしま美春行政書士事務所では、双方のご家族にとって「納得感」のある遺言書(付言事項)の作成をサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
「あれ?私の場合はどうなんだろ?」と気になった方へ
このコラムの執筆にあたり、一般社団法人 相続診断協会の「相続診断チェックシート」のチェック項目の一部を参考にさせていただきました。
「相続診断チェックシート」を使えば、ご自身の状況を診断することができます。
30個あるチェック項目に答えるだけで、ご自身の現状がわかり、「このまま何もしないと、何が問題になるのか」をあぶり出すことができます。
ご興味のある方は、「「相続診断チェックシート」診断希望」と、お気軽に当事務所までご相談ください(^^)