あなたの「困った」を「相談してよかった」に変える行政書士・相続コンサルタントのなかしま美春です。

全33回のコラム、第9回をお届けします。

この連続コラムでは、「相続でトラブルになりやすいこと」、そして「今できること」について、わかりやすくお伝えしていきます。

このコラムが、相続について考える小さなきっかけとなり、
そして「家族で話す」「書き残す」という第一歩につながることを願って――

ぜひ最後までお付き合いください。
全33回の一覧は>>こちら

【連続❢相続コラム】第9回:特定の相続人に多く財産を相続させたい

写真はイメージです

「長男は家業を継いで、親の面倒も見てくれているから多めに財産を残したい」
「一人で頑張ってきた娘に、少しでも多く渡してあげたい」
「障がいのある子どもの今後を考えると、やはり多くの支えを残しておきたい」

このように、相続人それぞれの状況や、これまでの関わりをふまえて、
「“特定の相続人”に多く財産を渡したい」と考える方は少なくありません。

しかし、法律で定められた“法定相続分(※1)”だけでは、こうした想いを反映できないことがほとんどです。
そこで今回は「想いをカタチにする」ためにできる準備について解説します。

※1 法定相続分(民法 第900条)
民法に定めてある各相続人の相続割合のこと

確実に想いを実現するには:やっぱり「遺言書」

特定の相続人に多く相続させたい——
そう強く願うなら、一番確実でおすすめの方法は「遺言書の作成」です。

遺言書があることで、

✅ 法定相続分にとらわれず、希望に沿った分け方ができる
✅ 遺産の種類や権利の内容、相続人の状況、「寄与分(※2)」など、さまざまな事情を考慮した、きめ細やかな対応が可能
✅ 自分の想いを「付言事項」として添えることができる

さらに「どうしてそのように分けたいと考えたのか」その想いを遺言書の「付言事項(ふげんじこう)」に記しておけば、他の相続人の「納得感」も生まれ、相続トラブルの回避にもつながります。

なお、遺言書を作成する際は、「遺留分(※3)」にも配慮しましょう。

※2 寄与分(きよぶん)
被相続人(亡くなった方)の財産の維持や増加に貢献した相続人が多めに相続できるという制度(民法第904条の2)

※3 遺留分(いりゅうぶん)
遺産を相続する一定の相続人に対して最低限保証されている遺産取得分のこと(民法第1042条)

((参考):(民法第906条)
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

もっとあります!:生前にできること

当事務所では、遺言書と併せて、以下にあげるような複数の手段を組み合わせることもおススメしています。

①:生前贈与を活用する

「まだ元気なうちに、自分の意思で財産を渡したい」
そうお考えの方には、「生前贈与」という方法があります。

ただし、税制については専門的な知識が必要です。
最新の制度に照らして適切な対策を行うために、贈与・相続に詳しい税理士へのご相談をおすすめします。

②:エンディングノートで“想い”を伝える

「なぜ、その人に多く残したいのか」を自分の言葉で残したい場合は、エンディングノートの活用もおすすめです。

たとえば…

●長男が長年、親の介護をしてくれた

●離れて暮らす娘の将来が心配

●一緒に暮らしてくれた子どもに感謝している

このような背景や気持ちを丁寧に書き遺すことで、他の相続人の理解を得られやすくなります。

※ただし、エンディングノートには法的効力はありません。法的効力がある「遺言書」と「エンディングノート」をセットで準備しておくことで、あなたの「“特定の相続人”に多く財産を相続させたい」という願いが叶う可能性が高まるのです。

③:死亡保険金を活用する

特定の相続人を死亡保険金の受取人として、生命保険の契約を活用する方法もあります。

生命保険の大きな特徴は、契約時に受取人を指定できること。
たとえば「長男にだけ〇〇万円多く渡したい」と考えている場合、生命保険(死亡保険金)の受取人を長男に指定して契約しておけば、他の相続人の手続きとは関係なく、長男がその保険金を「固有の財産」として、受け取ることができます。

ただし、相続財産に占める保険金の割合によっては、他の相続人から不満が出るケースもありますので、注意が必要です。
専門的な知識が必要ですので、贈与・相続に詳しい税理士・ファイナンシャルプランナー等へのご相談をオススメします。

一人では難しいときは、専門家へ

正しい生前対策の方法が分からない場合は、一人で悩まず、ぜひ専門家にご相談ください。

「困らない相続」がいちばん!

「法定相続分では不公平だと感じる」
「これまでの感謝をカタチにしたい」
「将来、家族がもめるのは避けたい」

そう気づいたときが、生前対策を始める絶好のタイミングです。

なかしま美春行政書士事務所では、相続に強い税理士、ファイナンシャルプランナー、各分野の専門家と連携し、“あなたの想いを実現する相続”をご提案しています。

「わたしのケースだと、どうなるの?」と気になった方は、まずは現状の確認からはじめてみましょう。

どうか手遅れになる前に、お早めにご相談ください。

「あれ?私の場合はどうなんだろ?」と気になった方へ

このコラムの執筆にあたり、一般社団法人 相続診断協会の「相続診断チェックシート」のチェック項目の一部を参考にさせていただきました。

「相続診断チェックシート」を使えば、ご自身の状況を診断することができます。
30個あるチェック項目に答えるだけで、ご自身の現状がわかり、「このまま何もしないと、何が問題になるのか」をあぶり出すことができます。
ご興味のある方は、「「相続診断チェックシート」診断希望」と、お気軽に当事務所までご相談ください(^^)